こけしの買取価格を決めるポイントは?買取が難しいこけしの特徴
「こけし」は、東北地方の工芸品として古くから親しまれ、今も若い女性の間で流行しています。
お部屋で眠っているこけしも、もしかしたら高値で売れる可能性があります。
このコラムでは、こけしの種類や、買取価格を決めるポイント、買取が難しいこけしの特徴についてもご紹介していきます。
もし、こけしの処分をお考えの方は、ぜひ最後までご覧いただけたら幸いです。
こけしについて
こけしとは、「ろくろ」で挽いて製作した木製の人形のことをいい、東北地方の郷土玩具です。丸い頭と円筒状の胴というシンプルな形状が特徴的で、多くの種類が存在するためコレクターも多いです。
こけしは、江戸時代から続く工芸品である『伝統こけし』と、伝統に囚われないデザインが魅力の『創作こけし』、そして形や絵付けも自由な『新型こけし』の3つに大きく分けることができます。
今回は、その中でも歴史の長い『伝統こけし』についてくわしくみていきましょう。
こけしの種類・産地
伝統こけしは12系統に分類され、系統や産地によって特徴はさまざまです。
ここでは、こけしの種類とその特徴についてご紹介いたします。
こけしの種類 | 産地 | 特徴 |
---|---|---|
津軽系こけし | 青森県 | 一本の木から頭と胴を彫り出す「作り付け」手法。頭はおかっぱで胸の部分がふくらみ、裾がスカートのように広がっている形が特徴的。 |
南部系こけし | 岩手県 | 通称「キナキナ」。赤ちゃんのおしゃぶりが原型で、木肌を生かした無彩色なものが多い。頭はゆるい差し込み式で、ゆらゆらと揺れるのが特徴。 |
木地山系こけし | 秋田県 | 一本の木から頭と胴を彫り出す「作り付け」手法。頭はらっきょう型で、胴は細めのストレート、頭部に赤色の飾りが描かれているのが特徴。 |
蔵王系こけし | 山形県 | 差し込み式の大きな頭が特徴的で、どっしりとした胴にはかさね菊や桜くずし、牡丹などさまざまな植物の模様が描かれている。 |
山形系こけし | 山形県 | 差し込み式の小さい頭と細い胴が特徴的。頭には赤色で放射線状に「手柄」の飾り、胴体には桜や梅の花、県花の紅花などが描かれている。 |
肘折系こけし | 山形県 | 三日月型の目と赤色の唇が特徴的。差し込み式の頭に、胴は太い直胴型、肩が張っていて段になっている。 |
作並系こけし | 宮城県 | かつて子どもが握って遊んでいたとされる細い胴と、しずく型の鼻が特徴的。「カニ菊」とよばれる蟹に似た菊の模様が描かれたものが多い。 |
鳴子系こけし | 宮城県 | 差し込み式の頭で、首を回すと「キュッキュッ」と音が鳴るのが特徴。頭は水引で結んだような前髪、胴は菊や楓、なでしこの模様が多い。 |
遠刈田系こけし | 宮城県 | 差し込み式の大きめの頭には赤色で放射線状に「手柄」の飾りが描かれている。なで肩と切れ長の目、多様な胴模様も特徴的。 |
弥治郎系こけし | 宮城県 | 頭にはベレー帽のようなカラフルなろくろ模様があるのが特徴。胴にはくびれがあり、襟や裾付きのものや華やかな色合いのものが多い。 |
土湯系こけし | 福島県 | 卵型の小さな頭に、「かせ」とよばれる赤い髪飾りが描かれている。細い胴に描かれたろくろ模様や、ろくろ模様を逆回転した「返しろくろ」模様も特徴的。 |
中ノ沢系こけし | 福島県 | 通称「たこ坊主」。大きく見開いた目に赤いフチ取り、団子鼻が特徴的。胴は大きな牡丹や桜の花の模様が多い。 |
こけしの買取価格を決めるポイント
こけしには値段がつかないものも多いのですが、価値のあるものは高値で売れるケースもあります。
ここでは、こけしの買取価格を決めるポイントをみていきましょう。
製作時期
売れるこけしは一般的に「戦前こけし」のことで、いわゆる『第一次こけしブーム』の頃のこけしです。
戦前につくられたこけしは古く希少性の高いものが多く、数万円~数十万円で取引されているものもあります。
こけしブームについて
こけしには第一次ブーム・第二次ブーム・第三次ブームがあります。
第一次こけしブーム
第一次ブームは戦前のことで、この時期のこけしがもっとも高く売れやすいです。
大正時代にはセルロイド製キューピーやブリキのおもちゃなどの人形が台頭し、玩具としてのこけしは衰退し始め、ある意味大人が収集する鑑賞品として生産されるようになります。
しかし、昭和3年に発行された天江富弥の『こけし這子の話』がベストセラーとなったことや、思想家の柳宗悦による民芸運動が高まったことで、こけしは玩具から工芸品として全国的に認知されるようになり、コレクターに収集されるようになりました。
この一連の動きが「第一次こけしブーム」とよばれています。
第二次こけしブーム
戦後の高度経済成長期は、こけしの需要と供給がもっとも増えた時期です。
昭和20年代後半からこけしの需要が徐々に高まり、昭和23年には「全国こけし祭り」の開催、昭和34年には「全国こけしコンクール」が開催されるなど、こけし工人の地位が向上。
その後も東京・大阪・名古屋など大都市のデパートや百貨店で、工人によるこけし作りのデモンストレーションや展示即売会などが催され、大きな需要を生み出すこととなります。
その後、木地の加工に用いる「ろくろ」が電動化されたことで生産効率が向上し、多くの需要に対し供給が可能に。
大都市では「こけし友の会」などの愛好会が増えるなど、需要の多い状態がしばらく続いていくこととなります。
この時期のことを「第二次こけしブーム」とよんでいます。
第三次こけしブーム
現在は「第三次こけしブーム」と呼ばれ、2010年頃から続いています。
これは、「こけし女子」「こけ女(じょ)」と呼ばれる、若い女性層を中心に広がった一大ブームのことをいいます。
刀剣を擬人化した大人気ゲーム『刀剣乱舞』による刀剣ブームから「刀剣女子」が注目されたように、女性が中心となってブームが生まれる傾向があり、こけし女子も同様です。
第三次ブームは、第二次のような投機的意味合いではなく、純粋にこけしの造形や描彩、デザインに魅了されて購入する方が多くみられます。
伝統こけし工人もその変化に反応し、従来のこけしに囚われない新しい伝統こけしの製作に取り組むようになりました。
ポップカルチャーの一端として、フランスなど海外でも紹介され、鳴子のこけしなどが販路を延ばしているようです。
工人・作家
有名な工人や作家が製作したこけしは美術的価値が高く、高値がつきやすいです。
例としては、鳴子系こけし工人の大沼岩蔵、蔵王系こけし工人の我妻勝之助、津軽系こけし工人の盛秀太郎などが有名です。
外箱や、作家名の記載がある札などが保管してある場合は、買取額アップにつながりますので、必ず一緒に査定に出すようにしましょう。
買取が難しいこけし
買取価格を決めるポイントについてみてきましたが、高く売れるこけしもあれば、買取が難しいこけしもあります。
ここでは、値段がつきにくいこけしの特徴についてご紹介していきます。
大量生産されたこけし
大量生産が可能になった『第二次こけしブーム』以降に製作されたこけしは売れにくいものも多いです。
とくに、高度経済成長期にお土産用として生産されたこけしは値段がつかない可能性が高いです。
<「伝統こけし」と「お土産こけし」の見分け方>
手書きの模様やデザインのものは「伝統こけし」である場合が多く、基本的に凹凸がない丸い頭をしています。
また、顔に凹凸があるものや胴に彫刻が施されているものは「お土産こけし」として分類されます。
ただし、第二次こけしブーム以降の作品でも、有名工人・作家のものであれば高く売れる可能性があります。
ヒビや割れがあるもの
骨董品として価値の高い古い時代のこけしの場合、ある程度経年劣化がみられることもあるでしょう。
しかし、欠損やヒビ、塗装などの修復跡などがあるものは買取価格が大きく減額になる可能性が高いです。ただ、価値の高いこけしであれば、それを差し引いても高額になるケースも多いです。
もし、お持ちのこけしに傷などがあっても、修復しようとするとかえって価値が下がってしまうおそれがあるため、そのままの状態で査定に出すことをおすすめします。
まとめ
- 伝統こけしの種類は産地ごとに12系統に分類され、それぞれ異なる特徴がある。
- こけしには第一次・第二次・第三次ブームがあり、第一次こけしブームである戦前につくられた希少なこけしや有名工人・作家の作品は高く売れやすい。
- 一方で大量生産されたものやひび割れのあるものは買取が難しい可能性が高い。